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2019年1月14日
 

本音を話すのは恥だと思っていた


期待されて、応援いただいて、強がっていました。見栄もあったと思います。
「助けて」とか「おかしくね?」と思いながらも、なかなか話せていなかったことをお話しさせていただきます。

ですが、発信を通して知ってほしいことがある。

どれだけ強い想いがあっても、自分が強くならないと何も作れないし守ることもできません。

手が震えながら書いたような内容です。

そこそこのボリューム感になってしましましたが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。

 

まず最初に結論からお話しします。

 

苦しみ続けている下請け工場はたくさんあります。
私たちもその中の一つです。

 


現状



弊社は私の祖母が創業してから、半世紀の間
表舞台に立つことの無い下請けの工場として
モノづくりに携わってきました。

祖母の代から技術力には定評があり、如何にメーカーや問屋さんの要望に応えられるか、良い商品をお客様に届けるために最大の努力をしてきました。

縫製に限ったはことではないですが、近年、多くのモノづくりをおこなう人と環境は疲弊しきっています。

熟練の職人は少なくなり、若手は育っていません。
残っていても下請けとして仕事をしている職人達はコストをギリギリ数円の利益の積み重ね、もしくはそれ以下に抑えられて仕事をしています。

ネクタイに限って言えば、一定数の生産を確保することで成り立ってきた通常の生産体制が、

クールビズが定着して以降、受注量は減り、それによる工場への負担は多大なものになってしましました。
一部のアパレル商品に関しては自動化の生産が可能になったりしていますが、ネクタイは構造上自動化が難しく、工場もメーカーも次々に無くなっていき、残った企業もどうなるのか・・・といった状況なんです。



しかしながら、それが現実的にはできていない。


 一方的な目線になってしまっている部分もあるのかもしれませんが、会社を運営していく上での経費部分は上昇傾向にあり、受注量などとのバランスを考えた上での加工費の割り増しは必須になってきているのです。

引き算のように、

「販売価格」 から「利益」「材料」「デザイン」 を引いていって、余ったのが 「縫製加工費」みたいな考え方がある。

交渉をしても単価を上げることができない。
単価交渉なら門前払いのケースだって当然のようにあるのが現実です。

じゃあ、交渉に応じていただけない取引先とは今後お付き合いしない方向で・・・
とならないのも現実です。

 もし現状を解決するためにとはいえ、コチラの要望を通そうと強気に出て、
『発注ストップ』になってしまうんじゃないかという恐怖はいつも付きまとっています。

間接的にしか商売ができていなかった為、単独で顧客を掴むこともできておらず、その方法すら知らないような環境。赤字にしかならなくても、下請けとして言いなりになっていることだけが最低限でも工場運営をしていくために一定の発注数量と売り上げを確保する方法だったのです。
現状を維持していくことに必死で、どんな無茶な要望を言われても残業なんかもしながら採算が合わなくてもやらざるを得ない。徹夜なんかはスタッフにお願いできませんから、社長をはじめとする役員がギリギリで行っていくような環境だって珍しくはありません。

口では「私たちの企画した商品を作ってくれる職人さんが居てこそです。作ってくれた人の想いもしっかり伝えられるようにしますね!」とは言っても・・・・・といった状況。

現場は自由とはかけ離れた状況で仕事をせざるをえなくなっている一面もあります。


働き手や後継者がいないのはなんで?


一部を除く繊維業界の会社は世間の平均よりも所得が低いことがほとんどで、
特に生産に携わる川上の人達は何円、何十円単位での仕事をさせられることだってある。

利益を出せない体質や環境にある以上、スタッフへの給料、福利厚生を含めたあらゆる環境を整備していくことは出来ません。
経営者もスタッフも一定の収入を得て、運営また生活

が出来なければ仕事として選ぶメリットはありません。

如何にモノづくりに対する想いや、技術的実力があっても、あくまでビジネス。
この前提を持って考えた時に、若者の職業選択のテーブルに乗ることもできないのです。

若手が育たない環境で高齢化していく経営者やスタッフの事情を抱えたままで数年後の生産体制は残っていくのでしょうか。

なぜに利益を出せない受け身の体質になってしまっているのは前述したとおりです。

その上で、「こんなことだってあるんだ」ということを書かせてもらいます。


聞いたことのある話も含めますが・・・こんなことあるの?


・「〇月〇日納期でウン千点くらいの生産をお願いしたいから、スケジュール絶対空けといて!」
と連絡を頂き、資材が届くのを待っていても全然来ないから問い合わせをしてみると、
「話が変わったから、あれナシ」

と言われ、急いで受注を確保するために奔走しなければいけなくなったことも・・・。

 

・「予定よりめっちゃ資材が遅れるけど、納期は変わらないからね。納期遅れはペナルティだよ」
なんてこともある。

 

・「この価格が無理なら他所でも海外でもどこでもやるとこあるからね」
と言われていたのは昔話?・・・言われるんじゃないかと怯えているのはもはや呪縛。

 

・「作ってもらったのは良いけど、納品してもらったら支払わないといけないから納品待って」
「指示書ミスがあったから作ってもらった商品は引き取れない」
なんて話はありえないけどあるみたい。

 


未来を見据えて、時代の変化に対応できなかった企業、
業界が悪いと言われるのも、
ごもっともなことだと思います。

 


仕事ですから、色々なことも起きます。

危機的状況になるまでに手が打てなかった人たちの責任は大きい。
もちろん自分も含めて。
誰かのせいにして逃げているしかしていない人たちもいれば諦めてしまっている人もいる。

コストを考えることは必須ではあります。
ですが誰かの不幸の上に成り立っているコストダウンは悲しすぎる。

末端の職人たちはそんなにフットワークは軽くありません。
お客様との関係性が遠いところに居る職人たちは、ただモノを作るだけの『道具』としてしか仕事が出来ていなかった状況で、発想も乏しくなり、ただ悪化していく環境を見ているコトしかできていなかったんです。

縫製業に携わる人たちからはよくそんな話を聞くし、

とりわけネクタイに関しては、どこも苦しんでいるようです。


なに?ここだけ時間が止まっているの?


目まぐるしく変わってきた環境の中で、

・今まではこうだった
・何年もこんな感じでやってきたから
・昔から変わってないから

と、個々だけ時間が止まっているのだろうかと感じるほどに何も変わらない、変えようとしない。

現状を把握して、行動を起こさず、既存のやり方だけを続けていくと誰かを殺します。

変わっていく環境に対して、お互いに共存して行ける環境や関係性を構築して行けないと持続性を無くしてしまうんじゃないでしょうか。

でも現実的にはパワーバランスや染み付いてしまった呪縛のような感覚からは逃れられず、
いわゆる「下請け体質」のまま過ごしている、過ごさざるを得ない職人はたくさんいるんです。


このままではいけない。


大切にしていきたいものはそれぞれにあるし、プライドを持って仕事をしていく環境を作り、

「職人=道具」ではなく、クリエイターとして自由にモノづくりができる自分たちの居場所を作ることが必要だと考えています。

日本のモノづくりを守る!というポジショントークだけでは何も変えられません。
小さな火種をいくつも起こして、実際に行動していくことが大切です。

各会社において、既に行動を起こしている所、やりたくてもできていないところ、諦めてしまっている所。
様々かと思います。

小さなことでもいいのです。いきなり大きなことをしようと思ってもできません。
時代は新幹線のように早く今いる所から移動していきます。

何もしていないことは決して現状維持ではありません。
何もしていないことは取り残されて、衰退に直接繋がっていくのです。

それぞれにできること、やりたいことを明確にし取り組んでいくことが出来れば何か起きる可能性が少しアップします。


私たちが挑戦したこと。


 問題解決のキッカケを作るために、今まで直接的に関わることのできなかったお客様との関係性を築いていくために、私たち職人と、お客様との間の架け橋となるブランドを作りました。

 

それがネクタイブランドSHAKUNONE’です。

ブランドを作るだけなら簡単ですが、作っただけではだれにも伝わらないし、買ってもいただけない。だからこそ何がお客様に支持頂けるのか、感動を与えられるのかを知る為に、自ら店頭に立ちお客様の生の声を聞く活動を始めました。

今までの一方通行のモノづくりではなく、お客様と共に商品作りをしていこうと考えたからです。

トレンドや個性だけを追い求めたネクタイではなく、お客様の生の声を活かし、さりげないこだわりと自然に馴染んで男性を魅力的に演出するネクタイは支持を頂き、過去2度のクラウドファンディングに挑戦しました。
今までたくさんの方の応援や支援を頂いて、立ち上げから数年で岡山県を飛び出して、大阪や東京の有名百貨店での販売もできるようになり、今までになかったような活動が出来るようにまでなりました。

様々な取り組みを通して、SHAKUNONEというブランド事業を成長させてこられたことは、
当然ながら私一人の力ではなく、支えてくださった方々のおかげです。

改めて、今まで支えてくださった皆様方に御礼申し上げます。

 


キッカケや気付き、たくさんの出会いをいただきました。
しかし、まだまだ周りを取り巻く環境は良くなりません。


私たちが作っているのは「物」です。
作っただけでは認めてもらえないし買ってもいただけない。
手に取っていただけるお客様に認めて頂いて、求められるモノを提供していかなければいけません。

しかし、その「物」を通して、「生き様」を表現して「環境」を作っていきたいと思っています。
良い物、認められ求められる物を送り出すことで、それを生み出す「環境」を生み出したい。

まだまだ壁が存在しています。

私たちだってブランド事業が成長してきているとはいえ、
売り上げの大きな割合を占めているOEM生産事業が崩れてしまえば、
いくら良いものが作れる技術や想いがあってもモノづくりを続けることができない状況になってしまいます。

 そんな状況だけは避けたい。

ベストなのは様々な立場でお互いを支え合える関係性をつくれること。
私の理想です。

 たかがネクタイ。
時代に取り残されたモノ。
暑苦しいし嫌い。

 そういう声も聞こえてきます。

 ですが、『身に着けるべき』『不要なモノ』という議論以前に、
ファッションとして自由に楽しめるものとして、私たちは大切に大切に仕立てていきたいと思っているんです。
だから、社会的に存在が悪だというような扱われ方をされるのだけは、辛くて悲しい。
これは望みに近い気持ちの部分ですかね。

 


 弱い部分をさらけ出すのは恥ずかしいことだと思っていた。


今までのクラウドファンディングや、SNSでは、こういった苦しみの部分は隠し、
表面の部分や想いの部分を強く発信してきました。

 生み出している商品に対して一切手を抜いていないですし、
自信と誇りを持って作ったネクタイです。
スタッフもいつも真面目に真っ直ぐ良い商品を作ろうとしてくれています。
それはこれからも変わりません。

自分たちはもっと成長できると思っています。

 自分達を取り巻いている実際の環境について話したり、弱い所を見せることは、

・期待してくださった皆様を裏切ることになるんじゃないか。
・見放されるんじゃないか。
・バカにされるんじゃないか。

見栄もあったし、怖かったというのが正直な気持ちです。

周りの方々からは、スゴイね、頑張ってるね、儲けているね。
と、たくさん言われました。
期待のお言葉を頂くたびに、自分を奮い立たせて成功しているように発信していくことに必死でした。

・祖母が立ち上げて母が守ってきた会社を守っていきたい。
・信じてくれているスタッフと仕事を続けていける環境を作っていきたい。
・家族を幸せにしたい。

こうして正直に声をあげて戦うことが、自分だけではなく、同じような環境に居て、もがいているたくさんの人たちの勇気に繋がり、何かを変えるきっかけになればという想い、
決断をしてこれを書いています。


 勘違いしてほしくないのは・・・


決して、楽な仕事をしたいというわけではありません。
今まで発信してきたことにも嘘はありません。
本当の苦しみや、現状をオブラートに包んで包んで発信をしてきました。

 ただ私は自由で健全な状態で仕事をしていける環境づくりをしていくことがしたいんです。

 その為には、ブランド事業であるSHAKUNONE’の事業拡大に挑戦していくことと、既存OEM生産体制を見直して仕組みを再構築していく必要があります。

特に、皆様に支えられてきたブランド事業に関しては、2015年に立ち上げてから成長を続けています。このブランドを育てていくことが一つの希望になっています。

 


後でいいや、ってことはない。今しかない。


この内容を見て、生意気だから干してやろう・・・的な考えを持った方がもし居れば、
すぐに吹っ飛んでしまうような小さな存在です。

衰退産業と言ってしまえばそうかもしれません。
厳しい環境でも、生き残って残存利益を得るという考え方もあります。

それでも、根本の環境を変えていく為に「今」立ち上がって行動を起こし、
挑戦をしていくことはやっていかないといけない事なのではないでしょうか。

お客様に寄り添いながら声を聞き続け、お客様に支持頂ける最高のネクタイをクリエイトすることで、環境整備と地域への貢献、そして自社が成長していくことでしか、
今までお世話になってきた方々、これから出会う方々に恩返ししていくことはできないんです。

 過去から現代へ、これから先に向けて動けるのは今を生きてる人だけなんです。


環境は自分で作っていくしかない


物理的な距離も情報の距離もひと昔前から比べれば格段に近くなりました。

こうした声をあげることもできずに諦めていた人もたくさんいたんだと思います。
今はこうして小さいながらにも声をあげることが出来て、それを受け取ってくださる方が居てくれる。

 そう信じてこのブログを書かせていただきました。

 この内容に関しては色んな立場からの様々な意見があると思います。

ただ一つ言いたいのは、私が見て育ってきたモノづくりに携わる職人達はカッコ良くて誇らしい。
それはどんな業界の職人にだって言えることだと思うし、声をあげることで今の環境が変わるなら、声を上げていきたいと思っています。

私がやっていることが正解だとは言い切れませんが、こうして行動を起こしているコトで可能性は0ではなくなっていると思っています。 


まだまだ未熟な私ですが


より良くなっていく為に、皆様からの応援やご支援やご意見、アドバイスを頂きながら進んでいきたいと思っています。

お客様に認めてもらって、継続的にこの仕事を続けていける環境作りをする。
そして、日本一信頼され、ネクタイのブランドと言えばと認知されるような魅力的なブランド作りをし、既存の事業でも満足いただける仕事をしていけるようにしていくことで、まずは自分たちの足で立ち、歩いていけるようにしたいと考えています。

 

前々から書こうと思っていた内容でした。
前述したように勇気がありませんでした。

内容が重複しているような箇所もあるかもしれませんが、

32歳の誕生日を迎えたきっかけに書かせていただきました。

 

今後とも、私たちにお力をお貸しいただければ幸いに存じます。

 

長々と失礼いたしました。