テレビ番組「アナザースカイ」で、イタリアのフィレンツェに修行に行き、靴職人となった花田優一氏が紹介されていました。
昨年に引き続き一年半ぶりの登場の回(2018/8/24)を観ました。
昨年と今年で彼も大きく変わり、私も大きく変わったので、ネクタイ職人として日本で活動している私から見た、「靴職人花田優一氏」について書きたいと思います。
※昨年同番組に出演した際に書いたブログはコチラからご参照ください。
→https://shakumoto.co.jp/228/
七光りだ、親の力だ、金持ちの所業だという声もチラホラ見えますが、
本当にそうでしょうか?
もし彼と似た状況で、同じことができますか?
偉大な父を持ちつつ、私たちにはわからないような重圧と闘いながら道を拓いていっているように私は感じます。
ピッティに出ることだって、確かに資金がある程度ないと挑戦だってできないことは事実かと思いますが、そこアデノ行動を起こせることは、シンプルにスゴイと思います。
彼のような靴職人、私のようなネクタイ職人、その他多くの職人達は、表舞台に出ることが無くスポットライトを浴びるようなことも今までは無かったし、多くの職人と言われる人たちは今でもそうです。
司会の今田耕司さんが、
「俳優に転向、なんて報道も見たけど?」という質問を投げかけておられました。
こうすると、
「職人という仕事を知っていただく機会になればと思い挑戦した」と話しておられました。
縁の下の力持ちや黒子のような「目立たない美学」もカッコイイと思う一面もありますが、
こうして、認知してもらえるような積極的な活動が出来ることは素晴らしいと思います。
彼という存在が魅力的になればなるほどに、作られる靴も魅力的になっていく。
そういった価値を高めていっている人として素直にスゴイと思いますね。
彼のようにチャンスを掴んで表舞台に立って活躍している職人は数えるほどしかいません。
ですが、想いを持って真っ直ぐ日々研鑽している職人はたくさんいます。
アイテムは違えど、同じメンズファッションに関わる一人の人間として、挑戦する気持ちを持ち続けて、前に進んでいくことが大切な事だと改めて気づかされました。
私たちの送り出すブランドは大切な人への大切なプレゼントに、そして、男性が自分絵のギフトとして選んでいただけるようなネクタイをお仕立てしています。
是非一度、商品もご覧になってみてください。
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「私は魔法使いなんで。」
と祖母が言うのを小さいころからよく聞いていました。
ハリーポッター的な魔法ではないのは幼いながらにも知っていましたけど、そうやって自信満々に言っている婆ちゃんが大好きでした。
僕たちの会社㈱笏本縫製は、そんなお婆ちゃんが内職を始めたことがキッカケだったんです。
僕の祖母が縫製業に就職し、結婚を機に退職。
子育てをしながら、得意としていた縫製の仕事をしたいということから、近隣の工場からの内職加工の仕事を集め、近所の仲間たちと一緒に自宅の一部屋を加工場として仕事を始めました。
お人よしと真面目さと体力が売りだったお婆ちゃんの引き受ける仕事は、
「納期に迫られたギリギリの仕事」が多かったらしいです。
夕方に何千枚も納品されて、それを「明日の朝7:00に取りに来るからなんとかしてくれ!」
という何とも大変そうな仕事をすることは当たり前で、そんな毎日を繰り返しているうちに、
「笏本さんの所に持って行けば何とかしてくれる」
といったような噂が出来ていたようです。
それ故に、自称だけではなく、依頼主からも、
「笏本さんは魔法使いじゃで」「小人の靴屋さんじゃ」と言われていたようです。
しんどかったと思いますが、本人は「頑張ったら喜んでもらえるから」とよく言っていたそうです。
でも、早くに夫を亡くしました。
僕の生まれる1年程前、49歳ですい臓がんだったらしいです。
だから、僕はお爺ちゃんに会ったことがありません。
そこから、今までの仕事が「生きるための仕事」に変わっていったと、聞きました。
受ける仕事も増やし、朝も昼も夜も働いて、自宅の部屋も一つずつ仕事場に変わっていきました。
そのころから、母も叔母もおばあちゃんの意思を受け継ぎ、一緒に仕事をするようになりました。
だから、ぼくの幼少期のベビーベッドはダンボールの中だったんだろうと思いますね。
(だから狭い所の方が落ち着くのかな・・・)
※ダンボールに入っている写真が見当たらなかった・・
それからも、魔法使いっぷりは健在で、祖母、母共に夜遅く帰ってきたり、一旦ご飯を作って食べさせて仕事に行く、なんてことはよくあり、
妹と、「大きくなっても同じ仕事はしたくないね」なんて話していたような気がします。
ですが、世の中では、今まで国内で作っていた衣料品の製造が海外生産メインに変わっていき、
今までのような受注量は確保できず、海外とのコストの違いから国内コストもどんどん安くなっていきました。
このころ、お婆ちゃんの体に異変が起きたんです。
体調を崩し、あまり仕事が出来なくなってきたんです。
思ったように体が動かない。
「パーキンソン病」という難病でした。
結果的に、娘に世代交代をさせるような状態になりました。
怒涛の時代の流れの中で生き残りをかけて、ネクタイ縫製へと舵を切ったのもこのころです。
ネクタイ専業ではなかったことが逆に幸いし、専業工場とは少し違った視点や感性を取り入れながら作ったネクタイは、取引先からは、「こんなにきれいなネクタイは見たことない」と言って頂けるようになりました。
今はこうして書いていますが当時は美容師として仕事をしていて、実家の仕事を見ることもしていませんでした。
そんな中で、仕事を任された母の体調が悪くなり、
本業の美容師の仕事が終わった後に、仕事を手伝うようになったんです。
僕は、自分の実家の仕事は、安物を夜な夜な作っているものだと思っていました。
ところが、大人になり改めて見てみると、誰もが知っているようなメーカーの商品や、ブランドの商品がたくさんあったんです。
単純かもしれませんが、この時に自分が育った背景にあるものはこんなに凄いものだったんだと気づかされたんです。
婆ちゃんのような魔法使いにはなれないかもしれないけれど、
ちょっとでも近づいて、追い越して、
婆ちゃんが作って、母たちが土台を作り上げたものを、守って育てていくことは、
「僕」にしかできないことなんじゃないかと思ったわけです。
自分の生き方は自分で決めたらいい。
無理に家業を継ぐことは無い。
そう言われて育ってきました。
本当は継ぐ必要は無かったのかもしれません。
でも、守りたいもの、未来に繋げたいコト、育ててくれたことへの感謝が、僕を動かしました。
一緒に働いてくれる仲間も増えました。
支えてくれる仲間も増えました。
信頼してくれるお客様も増えました。
それでも、まだまだこれからなんです。
厳しい環境は変わりません。
周りを見ても、たくさんあった縫製工場はパタッと無くなりました。
衣類の全生産数の2%ちょっとしか国産じゃないって状況ですから、当然の状況ですよね。
僕たちが、想いを引き継いで、モノづくりをし通して多くの方に感動していただける仕事をしていくには、勇気を振り絞り、支えてもらいながら前に進んでいくしかありません。
婆ちゃんの魔法には勝てないかもしれないけど、婆ちゃんには出来ない方法で、
僕なりの方法で意思を未来に繋いでいきたいんです。
僕が出来る恩返しって、今を生きて未来につなぐコトしかできないように思うんです。
そんなこと?そんなことではなく、それば僕の原点です。
おばあちゃんが生きているうちに、おばあちゃんとは違った形かもしれませんが、
僕も魔法使いのような仕事ができるようになって、おばあちゃんに褒めてほしい。
正直そんな気持ちもあります。
その為にも、一人でも多くの方に感動していただけるような仕事ができるようにならないといけません。
たしかにクールビズのが浸透してきて、ネクタイをしないことも良しとされる時代になっていることは理解をしています。
「あえてネクタイをする」そんな時代になったからこそ、
芯に響く魔法のようなネクタイが創れたらいいなと思っているんです。
小さな町の小さな工場の挑戦です。
目に触れる機会も少ないでしょう。だからこそ支えてほしい。
皆さんのご支援の一つ一つが大きな力になります。
素敵なリターン品を用意して恩返しさせていただきます。
是非応援よろしくお願い致します。
https://faavo.jp/okayama/project/2547
日本一のネクタイブランドになるコトにもまだ遠い道のりがあるとは思っていますが、それでも夢は大きく持って仕事に取り組んでいくことをいつも考えています。
クールビズが浸透して、ネクタイの需要が少なくなってきた現代に、「ネクタイブランド」として一番になることに何の意味があるのか。
育った環境や、支えてくれた人たちの影響も大きく関係してると思います。
夢を持とう。夢は必ず叶う。なんていう、上辺だけのものではなくて、
叶えるべき夢があるということです。
私一人で何でもできるとは思っていません。
だから、求めてくださるユーザーの元へ自分の足で行き、自分の声で伝え、自分の耳で聞き、そして考える。
その繰り返しをしています。
先日、我々のお仕立てしたネクタイをとても気に入っていただきずっとリピートしてくださっているお客様に言われました。
アハハ、と笑いましたがこんなに嬉しいことはありません。
作り手として、普通はこういった声を頂けることはありません。
今までなら、影の存在で、誰が身に着けるかもわからない。
誰が作ったかもわからない。
そんな状況で商品を提供していました。
こうして、お客様からの言葉を頂けることは、非常にありがたく、原動力になります。
こういった一つ一つの声が、少しずつでも広がりを見せ、大きな成果へと繋がっていくのだと思っています。
田舎の小さな町工場が世界一のネクタイブランドになる、なんて、だれもできると思わないような夢かもしれませんが、小さな繋がりを大きな力に変えて進んでいけば、私の代でできなくても、後の世代に受け継ぎ続ければ可能な夢なのではないかと本気で思っています。
SHAKUNONEのネクタイの生地を選び、配色をし、織りあげてお仕立てするまでに、3つのテーマがあります。
これは私が生まれた国、日本。
育ってきた環境。
支えてくださった皆様が居て構築されたモノです。
奥ゆかしい、謙虚、日本人は海外と比べてもこのような言葉が似合います。
さらにはネクタイは決して主役にはならない。身に着けてくださる方の魅力を引き立てる素敵な共演者であると位置づけています。
ですので、総じて派手なデザインはありません。
決して主張しすぎず、しかし、身に纏う人の中心で共演するモノです。
その為に色使いが多少の及ばず、シンプルなデザインとシンプルな配色でお仕立てしています。
時計、財布、鞄、ベルトetc・・・
男性の身に着けるモノとして、唯一体の中心、そして印象を決めるVゾーンを彩るのがネクタイです。
身に纏う人の品格を引き立て演出する為にも、ディティールや素材にこだわりを持っています。
素材は、国内でも有名な富士吉田地方のシルク織り。京都丹後地方のシルク織りを使用しています。
人肌に一番近いと言われ、美しさを放つ光沢をもった美しい天然繊維を使用しています。
仕立ても「身に着ける方の姿」を想像しながら、一本一本お仕立てを致します。
柔らかなお仕立てで、身に着ける方自身の気持ちよさ、他覚的に観た時の風合いのある男性を演出できるよう、醸し出される品格を細やかなディティール感で演出しています。
一つのモノが出来上がるまでには、必ず「ヒト」が関わっています。
織り成すヒト。
お仕立てするヒト。
身に着けるヒト。
たくさんのヒトが関わって、ヒトはモノを使います。
そのヒトそれぞれに歴史があり、想いがあり、願いがあります。それをフィルターを通さず、直線的に繋げることが、私たちのミッションです。
多くのヒトが紡いで繋いできたモノガタリを伝えたい。
そんな想いで、今まで構築してきた技術を大切にし育てていきます。
独りよがりで自己満足なモノではなく、成長する技術。そして後世に伝える技術として育んでいます。
そして製品に影響を大きく及ぼし、その人の印象を大きく左右する「色使い」。
見えている色は同じかもしれません。
しかし感じている色は十人十色。
私たちが生まれた国、育った環境、見てきた景色。それを育んだ世界観と歴史。
そんな色使いをテーマにし、「和色」を使用しています。
レッド=赤。 ブルー=青。 グリーン=緑。
といったような、平面的なものではなく、和の色の表現に着目し、
天色。金茶。濃藍。萌葱色。葡萄。などの、日本人独特の色彩感覚、色表現をコンセプトにしています。
日本国内でのネクタイへの価値観は、ひと昔前からは変わり、
当たり前だったからこそ軽薄になってしまっていたコトもあるのではないでしょうか。
私たちは不器用にしか伝えられません。
だからこそ、シンプルに魅力を伝えていき、それを感じてほしいと願っています。
5月の昼間なのにやたら寒いです。
クールビズも始まったようですが、ネクタイを外して暖房をかけている所もあるとかないとか。
それは意味がないのでは無いでしょうか?
その話はさておき。
2005年に提唱されたクールビズから約13年程経ちました。
当初はあまり定着せず、少しずつ世の中に浸透していきました。
その途中には、東日本大震災もあり、クールビズ期間を延ばすという措置もありましたね。
昔はネクタイは当たり前にするものでしたが、現在ではあえて結ぶモノへと変わってきました。
時代の中で変わりゆくもの、無くなっていくもの、たくさんあると思います。
皆さんの目にはどう見えているでしょうか。
ネクタイは必要ない。
ネクタイの意味は無い。
ネクタイが嫌いだ。
そんな言葉を見ることもしばしばです。
ネクタイ業界は、時代の変化に対応できず、衰退していくこともやむ無し、と言われることもあります。
その時の時代背景に合わせた変化をしていくことはどんな業種においても必要なことと思います。
ただ、ひとつ。
変わらない事は、ネクタイを結ぶことが、
[カッコ悪い]ということはない!ということです。
多角化、多様化、変化。
考えるべきことは多々あれど、
そんな今だからこそ魅力を最大限に引き出してお伝えすることが出来る存在でありたいと思っています。
職人は器用で何でもできる。ということはありません。
逆に不器用で、1つのことを真っ直ぐにしか出来ないからこそ、
その役割をキチっと果たす。
それが我々のミッションであると考えています。
それを支えるのはただ一つ。
ネクタイが好きだ、ということです。
いいネクタイを作りたい、という訳ではなく、そのネクタイを結んでくださる方が魅力的になれたら良い。
そんな想いです。
だから、ネクタイが嫌いだなんて言わないでください。