社長のドジから生まれた|ネクタイシルクのリボンシュシュ
― ネクタイシルクのリボンシュシュが生まれるまで ―
岡山県津山市。山あいの町にある、小さな縫製工場。
創業50年を超える私たちは、ネクタイ専門の縫製をずっと続けてきました。
伝統と技術に誇りはある。けれど、知る人ぞ知る町工場。
そんな私たちに、“全国に名前が知られる”という出来事が、まさかのきっかけで起こりました。
はじまりは、社長のドジから。
2025年4月末。ゴールデンウィーク直前の平日。
社長である私が、会社の年間カレンダーで「この日は出社にしても効率悪いから、休みにしよう!」と軽いノリで決めた日でした。
が、自分で決めた休みを、すっかり忘れて出勤。
会社に着くと、誰もいない。焦る。カレンダーを見る。やっと気づく。
「…今日、休みだった」
なんとも情けない。けれど、笑える。
そんな出来事を、何気なくX(旧Twitter)に投稿しました。
すると──
「12万いいね」「900万インプレッション」
全国の人が、笑ってくれた。
翌朝、スマホが鳴り止みませんでした。
朝起きると、フォロワー数が倍以上に。
投稿はバズりにバズり、見知らぬ人たちから「社長、かわいいかよ」「ここで働かせてください」といったコメントが殺到。
さらには「うちの会社の社長になってほしい」なんて声まで…。
ただの“社長のドジ”が、全国で共感され、笑いに変わっていった瞬間でした。
「女性向けの商品、作ってください」
届いた“本気の声”に、ふざけるわけにはいかなかった。
爆発的な反響の中、私たちはある傾向に気づきました。
それは、DMやリプライで数多く届く「女性でも使える商品、つくってほしい!」という声。
これまではネクタイ一筋だった私たち。
でも、ふと考えました。
「ネクタイに使っているこの上質なシルク。
髪にやさしい素材でもあるし、リボンシュシュにしたら、すごくいいんじゃないか?」
“会議とは呼べない会議”が、動き出した。
「あつくなるよね〜」
「髪まとめたくなるよね〜」
「それ、かわいいかも」
「シルクって摩擦少ないし、髪にやさしくない?」
「ネクタイを縫う手で、髪を結ぶって、いいじゃん!」
「つくろ、つくろ!」
社内で巻き起こったのは、もはや会議とも呼べない雑談の嵐。
でもその中で、リボンシュシュの試作は、たった1日で始まりました。
しかも、“30年後の魔女の宅急便ごっこ”という謎のノリも挟みながら(笑)
そして、「ネクタイシルクのリボンシュシュ」は生まれた。
素材は、私たちが誇るネクタイ用の国産シルク100%。
摩擦を抑えて髪にやさしく、保湿性も高く、自然なツヤを与えてくれる。
しかも、リボン部分は取り外し可能。
気分やシーンに合わせて、つけ外しができるセパレート仕様。
「思いつきと、楽しもう」という文化祭のような空気の中で、
本気の技術と、本気の想いが形になった、ちょっと特別なアクセサリーです。
SNSが“声”を運び、“行動”が繋ぎ、“信頼”が生まれた。
たった一つのドジがきっかけで、
小さな縫製工場が、全国の人の心に触れることができました。
思いがけない形で素材と技術が日の目を浴び、職人の手が止まらない今、私たちは心から思います。
やっぱり、「つくれる」って、すごい。
そして、「伝える」って、大切なんだと。
これからも、“この手で”できることを。
職人たちはいま、ゴールデンウィークで英気を養い中。
リボンシュシュの在庫も、まだひとつもありません。
だから、生産と発送は休み明けから、ゆっくり丁寧に始めます。
「それでいいよ」
「ゆっくり待つよ」
そんなふうに言ってくださる方のために。
ネクタイを縫ってきたこの手で、
少しだけ寄り道して、髪を結びます。
自己紹介
僕は岡山県の縫製工場の三代目として働いています。母子家庭の長男で、母から家業を継ぎました。実は「私の代で潰すから」と言われた縫製工場でしたが、継ぐ決意をしました。子どもたちには背負わせたくないという親心もあったんだと思います。だけど、戦ってきた母親の姿をみてきたからこそ、想いごと継ぎたいと思ったんです。2015年には夢だったブランドを立ち上げ、「いつか総理大臣に結んでもらえたらいいね」と話していました。途中では苦しいこともたくさんありましたしが、ただ、毎日コツコツと取り組んできたことで、2022年には総理大臣にネクタイを結んでもらうことができました。
諦めなければ夢が叶うわけではないかもしれませんが、諦めなかった人だけが夢を叶えるんだと思います。
熱い思いをもって仕事をしていますが、悩んだり、不安になったり、自信を失ったりすることもあります。ですが、A様のように私たちの積み重ねを感じてくれたり、支えてくださる方々がいることで、前に進んでいけます。何者でもない自分たちの出会いや挑戦が誰かに届き、ほんの少しでも何か変わればいいなと思います。すこしだけでいいので、僕たちのことを知ってもらえると嬉しいです。
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