視覚に障害のあるお客様との出会い|ネクタイブランドSHAKUNONE(しゃくのね)
※この記事はご本人様のご了承をいただき書いております。以下敬称を”A様”とさせていただきます。
また、Twitterで一部の方から「作り話」という心無いコメントも入っていますが、本ブログ後半にも紹介しているデジタル版の新聞記事の中にもあるように、A様ご本人も取材に応じてくださっています。決して気持ちの良いコメント内容ではありませんのでご配慮いただけますと幸いです。
本物の価値は見えなくてもわかる。だからあなた達を選ぶんだ。
初めて僕が涙をこらえた日
いつもお電話でご注文をくださるお客様。
ネットでの買い物があたり前になったこの時代に、「なんでいつも電話なんだろう?」と不思議に思っていました。
特にA様は、個別の商品ではなく、「〇〇用のネクタイが欲しい」「〇〇に使える商品を送ってほしい」といったように、使う用途やシーンを伝えて相談してきてくださいます。相談されること自体はよくあることですが、まずはデザインを見て気に入ったモノの中から相談をしてきてくださったり、お選びになられることがほとんどです。だからこそ、すこし不思議に思っていたんです。
そんな中、また同じように注文の電話をくださった際、「次にイベントの予定はありますか?」と聞かれたんです。直近、大阪で展開をする予定があったので、その日程をお伝えしました。イベント当日、他のブランドは全く見ず、まっすぐSHAKUNONE(シャクノネ)のブースに来てくださるお客様がいらっしゃいました。そのお客様がA様だったんです。
※反響をいただいたツイート
会いたいと思って今日は来ました。
白い杖をつきながら女性の方のサポートを受けてゆっくりと歩いてくるA様。A様は昔から視力に障害があり、ここ数年でほとんどの視力を失われたのだそうです。ネットで商品のデザインを見ることもできず、お1人では店頭にも足を運ぶことが難しい。それでも、私たちに会いに来てくださったんです。SHAKUNONEを知ってくださったのは、身近な方からプレゼントしてもらったことがキッカケだったそう。そのとき、思わず聞いてしまいました。
「なんでいつもウチを選んでくださるんですか?」と。その後に続けて言われた言葉に私は、初めて現場で涙を堪えました。
「目が見えていた時からネクタイが好きなんです。カッコイイから。今はもう”デザイン”も”色”も誰かに説明をしてもらわないとわからないけど、生地や縫製の良さは人一倍わかるんです。感覚で信じたものだけを使いたい。だから選んでいます。今日はどうしても作り手さんに会いたくて来ました」
”ちゃんと伝わっているのかな?”というジレンマを抱えていた。
長年培ってきた縫製の技術には自信はあれど”私たちのこだわり”や”モノの本質的な良さ”は伝わっているのか?というジレンマは常に抱えていました。実際、「デザインが素敵だね」と言われることはあっても「縫製が素敵だね」って言われることはほぼありません。そんな中で、A様にかけていただいた声が、今までモヤモヤしていた心を洗ってくれたような、救われたような気持になりました。
私たちの仕事は絶対に伝わるんだという自信になった
モノヅクリの本質的な価値を再認識させてくれて、自分自身を信じても大丈夫なんだと気付かせてくれたA様。もしかしたら伝わっていないのかもしれない…という余計なジレンマを吹き飛ばしてくれました。感動した私は「このお話は、こだわって仕事をしているいろんな職人さんの励みになると思うんです。あまり影響力はありませんが、僕のSNSで発信させてもらっても良いですか?」と聞いたところ、「私の言葉や感覚が役に立つのなら」と快く快諾をいただきました。ほんとうに、感謝であふれる出会いでした。その場にあったメモ帳にこの出来事と、その瞬間の想いをメモし、会社に帰ってスタッフ全員を呼んでこの出来事を報告しました。「いろんなことが報われた気がする…」と泣く職人さんもいて、私も重ねて感動。社内の士気も高くなりました。
自己紹介をすこしだけ
僕は岡山県の縫製工場の三代目として働いています。母子家庭の長男で、母から家業を継ぎました。実は「私の代で潰すから」と言われた縫製工場でしたが、継ぐ決意をしました。子どもたちには背負わせたくないという親心もあったんだと思います。だけど、戦ってきた母親の姿をみてきたからこそ、想いごと継ぎたいと思ったんです。2015年には夢だったブランドを立ち上げ、「いつか総理大臣に結んでもらえたらいいね」と話していました。途中では苦しいこともたくさんありましたしが、ただ、毎日コツコツと取り組んできたことで、2022年には総理大臣にネクタイを結んでもらうことができました。
諦めなければ夢が叶うわけではないかもしれませんが、諦めなかった人だけが夢を叶えるんだと思います。
熱い思いをもって仕事をしていますが、悩んだり、不安になったり、自信を失ったりすることもあります。ですが、A様のように私たちの積み重ねを感じてくれたり、支えてくださる方々がいることで、前に進んでいけます。何者でもない自分たちの出会いや挑戦が誰かに届き、ほんの少しでも何か変わればいいなと思います。すこしだけでいいので、僕たちのことを知ってもらえると嬉しいです。
もしよろしければ、サイトを見ていってください。
▶️https://youtu.be/8p_QhXn9X7A
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お客様と職人の距離を縮め喜びや感動を共有することが、私たちの原動力。
「職人としてお客様の声を聞く」私たちが大切にしていることです。ファクトリーでただ作り続ける職人ではなく、職人自身が店頭に立ち、お客様との対話やコミュニケーションを取ることで、喜びや感動を共有することができます。それは、より良いクリエイティブに影響することを知っています。
主に東京、大阪、名古屋など、都市部の一流百貨店での限定販売会を行ったり、Twitter、instagram、LINE公式アカウントを活用したコミュニケーションを大切にしています。
大量生産はしない。時間がかかっても大切に仕立てる。
SHAKUNONEのネクタイは、一本ずつ職人の手に頼って仕立てています。同じデザインのもの作り続ける方が簡単です。効率重視で生産することもできます。もしかしたら、「古くさい」と言われるやり方なのかもしれません。しかし、どれだけ時間がかかっても、新しいデザインに挑戦し、手仕事でしか出せない風合いにこだわり続けています。一部定番のデザインもありますが、「いつでも新しい発見をしてほしい」「特別な一本を届け続けたい」という想いを大切にしています。
家業を継いだ話
工場も技術も事業の継承を行えない環境になっています。私も元々は家業を継ぎ気は全くなく、高校を卒業してからは美容師をしていました。しかし、とある日に数年ぶりに家業と真剣に向き合うことがあり、そこで改めて家業の凄さと厳しさを肌で感じました。そして、自分の生まれ育った背景には家業の存在がある。こう感じたコトから家業を継ぐ決意をしました。しかし「私の代でつぶす。だから継がないで。」と母から頼まれました。きっと背負わせたくなかったんだと思います。それでも僕は継ぎました。だって、ずっと僕たちのために戦ってきてくれた母。その目は、まだ生きていたから。なら僕もたたかおうと決断しました。親の心子知らずでもこの決断を正解にするのが僕の役割だと思っています。だからこそ掲げた理念が『お客様に喜びを。作り手にめいっぱいの幸せを』です。
総理大臣にネクタイを結んでもらった話
”できるわけがない”と言われた夢。『いつか総理大臣にも結んでもらいたい』ブランドをはじめたばかりの時に話し合った夢。田舎の町工場から、6年間、毎日コツコツと積み上げてきました。そして先日、ステキなご縁があって総理大臣に結んでもらえたんです。“想いと継続“が夢を叶えました。ちいさな町工場にだってできます。
出る杭は打たれたきた…
ちいさな町工場の作ったブランドの認知が広がってくると、挑戦や成長に対してよく思わない人たちもいて、露骨に嫌な顔をされたり嫌味を言われたり、「あまり目立ってると…わかってる?」と半分脅しのような話が来ることもありました。そういった声に触れる度に悔しいおもいをしていました。それに、仕事がなくなって干されるんじゃないかと怖かったです。でも、「それオモシロイね。一緒にやろう」とポジティブに声をかけてくれる仲間とも出会えるようになりました。それぞれの正義の中でお仕事をしていると、立場上ぶつかってしまうこともあります。ただ、足を引っ張り合うのではなく、いかに一緒に成長していけるかが重要なんじゃないかと、心底おもいます。
努力が必ず報われるわけではないけれど…
よく、「努力は必ず報われる」と言われます。もちろんそう信じたいですし、そう思わなければ前には進んでいけません。ただ諦めなかったからといって夢が叶うわけないんです。大人になるにつれて痛いほどわかってきますし、たぶんみんな気付いています。悔しいけど、 自分の平凡さが心底イヤになって、たくさんの人が挫けていきます。それでも引けない時がくるんです。そのときは大きく深呼吸をして『諦めなかった人だけが夢を叶える』と声にだして、もう1日だけ続けてみるようにしています。その積み重ねが、いろんな素敵な出会いや経験を呼び込んでくれたし、こういった大きな一歩に繋がっているんだと思います。
- 朝日新聞デジタルでも記事にしていただきました。
⇒いつも電話でネクタイを注文する男性 理由を知った日、社長は泣いた:朝日新聞デジタル (asahi.com)
ネクタイができるまでの動画も見ていってください。
JAPANネクタイブランド | SHAKUNONE(しゃくのね)
小さな縫製工場から産声を上げたネクタイ専門のファクトリーブランド【SHAKUNONE(しゃくのね)】
国産のシルク生地を使用し、職人のハンドメイドにこだわり一本一本丁寧にお仕立てしております。
ブランド | SHAKUNONE'(シャクノネ) |
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FACTORY |
〒709-4623 岡山県津山市桑下1333-6 |
営業時間 |
10:00~17:00 定休日:土・日・祝 |
マネージャー | 笏本達宏(シャクモトタツヒロ) |
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