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2017年3月23日
 

我々は創業50年を迎える縫製会社で、元々私の祖母が、自宅の一角を使い、
近所の主婦さんたちを集めて、内職加工の仕事を始めたことがキッカケの会社です。

私の母(現社長)の代で会社も移転し、工場を構え、本格的にミシンを踏むようになりました。
私も、苦労していた母に姿を見て育ちましたし、母もこんなに苦しい業界に入ることは無い。
自分の思う道を進めばよいという考えから、昔から夢だった「美容師」の道へと足を踏み入れました。

そんな中、アパレル商品全般の生産が海外に出ていくような時代になり、国内の生産状況は悪くなり、会社も疲弊しきっていました。

廃業も視野に入れていた中、ネクタイ縫製に出会い、思い切ってネクタイ縫製の道に飛び込みました。

ネクタイの縫製を始めたのは良いモノの、当然、他所の工場が縫製方法なんかを教えてくれるわけもなく、

買ってきたネクタイを解体して縫い方を研究したり、より良い商品を作るにはどうしたら良いかなど研究を重ね、独自の縫い方を作り上げました。

おかげさまで、メーカー様や販売店様からは商品のクオリティに信頼をいただき、OEM受注商品をメインに仕事をさせていただいています。

しかしながら、現在は昔と違い、縫製職人は急激に減少しています。
国内生産の疲弊と、仕事の多様化、いろいろな原因で国内の職人は全く育っていません。
私も、美容師という仕事をしていましたが、ある繁忙期の時期に、現社長の母より手伝いの依頼がきました。

美容師の業務が終わった後、夜な夜な家業の手伝いを始めました。
そこで大きく考え方が変わりました。
大人になってみて改めてみた家業。
肌で感じた情熱。
誰もが知っているようなブランドの商品を作る高い技術力。
衝撃でした。

正直、周囲で縫製に携わる仕事をしている同年代もいませんし、どちらかというと、
カッコ悪い仕事(失礼ですが)と思っていました。
体感してみて、カッコ悪くなんかない。
こんなすごい技術を持って、業界の縁の下の力持ちとして仕事をしてきたのかと思いました。
自分が育ってきた背景、ストーリーにはこの仕事がある。
自分には自分の人生がある と思っていたのですが、実際仕事として体感すると、今の自分と、家業を切り離して考えられなくなりました。
それを感じたことで、一気に興味が湧き、美容師を辞め、家業の縫製加工業に飛び込みました。
とは言っても、楽な仕事は全くなく、以前勤めていた時より厳しく、
大変でつらい思いばかりでした。
モノづくりは楽しいのですが、大手販売店の商品を受注したメーカーの依頼を受けて、商品を加工する下請けの小さな町工場という現状で、

良い商品を作っていて信頼できるモノづくりをしているから安定した発注が来ている
という自負はあったものの、ふと考えたときに、一つのことを思いました。
『苦労してよい商品を作っているけど、この商品を作っているのが片田舎の我々だということを誰が知っているのだろう』
これを考えたときから、
『自分たちが考えて、作りあげた商品を、自分たちが作ったとアピールして、直接お客さんの反応がみたい』
という風に考えるようになりました。
下請け業者として、とか、職人として、とか
表に立つべきではないとか、主張しすぎとか、立場がどうとか。
そんな声もありましたが、でもここで何もしなくて、発信して行くことはできないという思いから、
自分たちがやっている事業やモノづくり、商品を改めて見つめなおし、
持っている技術力+デザイン+価値化を行い、
ファクトリーブランドSHAKUNONE【笏の音】を生み出しました。
自社ブランドSHAKUNONEのネクタイは、

デザインこそ飽きずに長く使ってほしいという想いからオーソドックスなものが多いですが、機械化されたシステムやコストダウン商品とは違い、一つ一つの商品の細部まで手作業にこだわり、人の作った温もりを感じると共に、ネクタイが本来持っている魅力を引き出し、結びやすく、かつ苦しさを軽減させる作り込みをしています。

ありがたいことに、購入していただいたお客様からも、多くの嬉しい声をいただきます。

決して華やかとはいえない縫製の仕事ですが、
生地を製品に変貌させることができる縫製は裏方として無くてはならない存在で、
見えない部分で当たり前のことをやる仕事かと思います。
その当たり前をつきつめて得た経験と技術を存分に活かした縫製の仕事がカッコ悪いわけがない。
そんな我々の仕事や、職人を価値化して、良いモノづくりを続けていける環境作りをしていくことが今私にできることかと想い仕事をしています。

世間はクールビズが定着して、以前は年中ネクタイを結んでいたものが、
現在はシーズンアイテムと化してしまいました。
長い時間をかけて、スーツ、シャツ、靴、ネクタイがそろって完成されてきたスタイル。
一式そろえれば、卒なく礼節をわきまえることができていたスタイル。
その中の一つを省くだけで、一気に100%のセンスが求められるようになりました。

そんな今だからこそ、逆境の中でもこだわって一つのモノを作り続ける我々がやらなければならないことがあると思っています。
実際、我々だけが悩んでいることではございません。
多くのアパレル関係、国内縫製従事者が悩みを抱えて仕事をしています。

そんな立場にいる方々にも元気や勇気を与え、モノづくりを支えてきた多くの職人や技術者たちの価値化をするためにも、今やらなければならないことがあると考えています。